
ブラームス 交響曲第1番 朝比奈隆&東京都交響楽団(1996)
(水曜日に御馴染み?の)特集ですが本年度最初は人気曲「ブラームス 交響曲第1番」であります。
今回登場は日本を代表する指揮者、そして交響曲3B(ベートーヴェン、ブルックナー、ブラームス)を振らせたら圧倒的な印象がある朝比奈隆の演奏。その朝比奈隆が東京都交響楽団と1996年に録音したライブが今回聴いた演奏。
と書いたのですが、自分にとって朝比奈指揮のブラームスはイマイチの印象があります。昔大阪で聴いた朝比奈&大フィル?の実演、さらに新日本フィルと録音した全集CD。どちらも(悪くはないのですが)グッとくるものがあまりないように感じられたのが原因であります。(これはこの曲のフルトヴェングラーの演奏があまりピンとこないのに近いような気がします。)
さて(失礼ながら)そういった先入観をもって聴き始めたこの演奏ですが、聴いてみた印象としては「久々に充実したブラームスを聴いた。」と大変素晴らしい演奏でありました。これだけ重量感のあるブラームスを聴いたのはいつ以来だったでしょうか。
まず特長として顕著なのは演奏時間が非常に遅い事(約53分)。特に両端楽章が遅いのが目立ちます。第一楽章の出だしが遅いのは当然として、中間部にも今にも止まりそうなぐらい遅い部分がかなりあり非常に個性的。しかしこの遅さにこそこの演奏が成功した理由の一端があるような気がします。
基本遅いテンポですが決して弛緩した部分が感じられません。これは朝比奈のもっているリズム感や時間間隔とブラームスの曲が非常にマッチしているためだと思われます。聴き手からするとどうかと言えば、朝比奈の奏でるブラームスの世界を堪能するには丁度よい時間感覚のように感じられます。曲が始まってしまうと「遅い」といった感じがあまりないのですが、これは朝比奈の手綱捌きが絶妙であるためでしょうか。(自分も最初聴いた時は出だしで少し遅いと思いましたが、全曲通じて聴くと遅いという感じは全くなく、ipodの時間表示を見て遅い事に初めて気づいた次第であります。)
次に顕著な特長としてはブラームス特有の渋さよりも美しさ(美感)を感じる点であります。これは中間楽章により感じられるのですが、各ソロパートののびやかな演奏が大きなポイントになっているようです。特に第2楽章の弦楽セッションの甘美的ともとれる響きは素晴しい。
そして何より(現代では少なくなった)重心の低いオケの響きが何とも味わい深い。作曲家によっては古臭い響きになってしまうがブラームスにはピッタリ、ちょっと昔聴いた東独のオケにみられる郷愁感すら醸し出しております。
過去のブラームスはがっしりとした構成重視の印象が強かったのですが、今回は引き締めるポイントは最低限に抑えてオケにある程度自由を許している事で潤いのある響きへとなっております。さらに弦楽をしっかりと鳴らす事を基本にここ一番では木管、金管そして打楽器が非常に活きているあたり職人朝比奈隆の志向の芸を聴いているようでありました(特に最終楽章のホルンは印象的)。
この演奏当日ライブで聴いていた人がちょっと羨ましいですね。これ実演で聴いたらきっと「ブラヴォー」と叫んでいたでしょう。朝比奈隆快心のブラームスが聴けて大変満足でありました。
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