
シューベルト ピアノ五重奏曲『ます』、シューマン:ピアノ五重奏曲 田部京子(p)カルミナ四重奏団
本日直木賞が発表されまして自分が贔屓にしている作家である山本兼一『利休にたずねよ』が受賞いたしました。正直前作「いっしん虎徹」の方が凄い作品でしたが受賞できてうれしい限りであります。さて晴れやかな気分ですから聴く曲もそれに合わせてチョイスといきましょうか。
田部京子とカルミナ四重奏団のコンビによる「シューベルト ピアノ五重奏曲『ます』」が今回聴いた演奏。この両者10年前にライヴで演奏した事があるらしく10年ぶりの演奏が今回の録音となります。(2008年録音)
聴いてみた感じとしては「みずみずしく溌剌とした中にライヴ感も漂う演奏」という印象。
まずピアノと弦楽楽器のバランスが絶妙。この「ます」はピアノが非常に強い演奏が多く弦楽セッションが伴奏に感じるものが多いのですが、この演奏はカルミナ四重奏団の響きが非常にはっきりと聴こえてきます。
第1楽章の出だしから挨拶代わりと言わんばかりにチェロとコントラバスが「ぐいっ」と主張しております。それでいて中間部ではやや控えめに奏でたりと即興的な雰囲気もにおわせながらなかなか一筋縄ではいかない演奏。
第2楽章をヴァイオリンの美しい音色が印象的な優しい演奏、第3楽章は田部京子のピアノとカルミナ四重奏団のお互いに刺激を受けあいながら対峙している溌剌とした演奏で快活さが素晴しい。
旋律が有名な第4楽章はピアノのしっとりとした旋律をベースに奏でられる部分と全体的なアンサンブルがしっかりと鳴る部分のコントラストが非常に楽しめます。最後も小粋に終わりなかなか。
最終楽章は室内楽的なアンサンブルの醍醐味が満載で聴き応えがあります。ピアノと各弦楽パートによる音のキャッチボールが非常に楽しめます。そして爽やかさを残しながら颯爽と終わるエンディングはいいですね。
録音が楽器の音を自然に捉えておりみずみずしい響きになっており素晴しい。(SACD層はもっと凄い音なのではないでしょうか)
この演奏アンサンブルの精度とか構成的にはフォルムが緩いような感じがあるのですが、逆に即興性が高くしかもそれがメンバーで考えられた演出であるような雰囲気があります。演奏者が演奏を満喫している姿が目に浮かびそうな演奏、そして聴き手を楽しませる演奏。これぞ室内楽の醍醐味であります。
あと今回一番感心したのが実は田部京子のピアノ。以前はやや弱々しい線の細い音の印象があったのですが、今回の演奏を聴いて考えを改めました。今度彼女が弾いているシューベルトの演奏聴いてみようと思います。
高価な国内盤でしたが勇気をもって購入して正解でありました。(HMVの本日の特価に感謝)
いつもながら「ます」という曲やはり名曲であります。
