ウェーバー 『魔弾の射手』全曲 ベルクハウス演出、アーノンクール&チューリヒ歌劇場、ザイフェルト、サルミネン、他(1999 ステレオ)
今回の「百人百曲」はウェーバーの歌劇『魔弾の射手』を聴きます。
この歌劇『魔弾の射手』はドイツの民話を元にしたと言われ、ドイツの深い森や中世の封建時代を舞台にした作品に仕上がっています。
「魔弾」とは必ず射手の思いのまま命中する弾の事で、最後(7発目)の1発だけ悪魔の望みどおり命中する弾の事。この魔弾をめぐって話が展開していくというストーリーであります。最後が単純明快なハッピーエンドで終わるものではないので天邪鬼な自分などには結構楽しめる?オペラであります。ちなみに「序曲」は単独で演奏される機会も人気の序曲ですね。
さてアーノンクール盤であります。
この演奏、まず第1幕の最初を観ただけで歌劇『魔弾の射手』に人々が抱いている一般的な音や映像イメージからの脱却を図る事を意図した演出である事がよく分かります。
ベルクハウスによる(ベタな)ドイツの森を排除した演出、アーノンクールのつや消しをしたような乾いたサウンドがそれにあたります。
ベルクハウスによる演出は斬新というか奇抜というべきか。
第2幕狼谷のセットなど(こちらの想像力がないのもあるのですが)かなり物足りない印象。
第3幕でアガーテの「婚礼の冠」を持ってくるが開けてみると「葬儀用の冠」が入っているという場面。花嫁介添娘の態度がアガーテに冷たく、彼女達が入れたのではないか?と勘ぐってしまうほど。
最後のマックスが魔弾を鳩に向けて撃ったらアガーテに命中?という場面、魔弾が結果的にカスパールに命中するまでの流れが場面が散発的に展開するため非常に分かりにくい。
とまあ演出的には最後まで正直馴染めませんでした。少なくてもドイツ・ロマン派のオペラといった雰囲気は除かれているようです。
衣装もカラスの集団かと思われるぐらい「真っ黒」で統一、おかげでサミエルがどこにいるのか探すのが大変でしたね(笑)。
歌手陣はまあ普通といった感じでしょうか。マックス役のペーター・ザイフェルトとカスパール役のマッティ・サルミネンはワーグナーも得意なメンバーだけにずっしりと聴き応え充分。
しかし歌劇の要であるヒロイン・アガーテはいけません。歌唱うんぬんではなくヴィジュアル的にいかんせん無理がありすぎ。アガーテ役のインガ・ニールセンを最初観た時、「あれアガーテの母親って出てきたっけ?」と思ってしまったぐらい苦しい設定。従兄弟であるエンヒェンの若々しさもあり、ご丁寧にアガーテをアップでとらえるため観ているこちらの方が正直辛かった。
アーノンクールの壮麗な装飾を省いて、心地よくない野暮ったい演奏に徹したスタイルはなかなか目新しい印象。楽しむというよりは聴いていて唸りたくなるその響きは流石。
全体的にちょっと肩すかしの印象。それは先にも述べたとおり自分が期待していた一般的な歌劇『魔弾の射手』の印象とはかけ離れた演出に最後まで馴染めなかった部分が大きい。舞台に感情移入出来ず、音楽に集中出来ずではやはり楽しめません。オペラにおける演出の重要性を知った演奏でありました。
歌劇『魔弾の射手』の音楽が素晴らしいのはよく分かりましたので今度は耳で楽しむとしましょう。
(追記)
実は歌劇『魔弾の射手』の演奏、当初はクライバー盤を紹介する予定だったのですが、H●Vのオンラインショップのオーダーが3週間程たった今も「取り寄せ中」のままでありまして不本意ながらアーノンクール盤での紹介となった事一言申し上げておきます。

