オトテール フルートと通奏低音のための組曲集 前田りり子、市瀬礼子、コーネン
先日目に付いたのがフランスの歴史を語らせたらピカイチの佐藤賢一による「カペー朝」。
カペー朝 佐藤賢一 講談社現代新書
長いフランス王朝史の初期に位置するカペー朝ですが、思い出してみても意外と印象に残っていない。なら早速という事で現在読んでおります。
このフランス王朝、最後は(ベルばらの舞台としても有名な)フランス革命が起こるブルボン朝まで続いております。(このフランス革命も佐藤賢一「小説フランス革命」のシリーズが現在刊行中。)
そのブルボン朝絶頂期の王様と言えばルイ14世。このルイ14世ベルサイユ宮殿を造った事でも知られています。そのベルサイユに招かれた賓客などを宴でもてなしたりしたこともあってか、この時代フランスでは文化が非常に盛んに。そしてイタリアなどに遅れをとっていた音楽も文化隆盛の風に乗って発展いたします。
今回とりあげるはそんな時代に活躍したフルート奏者としても名高いジャック=マルタン・オトテール。一族もオトテール一族として名を成しておりました。
ちなみにオトテールの時代に活躍した人としては
J.オトテール(仏)1674−1763
ヴィヴァルディ(伊)1678−1741
J.S.バッハ(独)1685−1750
ヘンデル(独・英)1685−1759
ハイドン(墺)1732−1809
ルイ14世(仏)1643−1715
徳川吉宗(日)1684−1751
音楽史的にはバロック音楽全盛期に活躍したと言えばよいでしょうか。
(ちなみにこの時代日本では<暴れん坊将軍こと>徳川吉宗の治世と覚えておくと分かりやすい。)
オトテールについては前田りり子自身の解説に詳しくあるのでそちらをご覧になることをおすすめいたします。
今回はそんなオトテールが作曲した「フルートと通奏低音のための組曲」を聴きます。演奏するは若きフルート奏者前田りり子を中心としたメンバー。(2008年録音)
<収録曲>
オトテール
フルートと通奏低音のための組曲集第1巻(作品2)、第2巻(作品5)より
第1巻 組曲第3番ト長調 作品2の3
第1巻 組曲第4番ホ短調 作品2の4
第1巻 組曲第1番ニ長調 作品2の1
第2巻 組曲第1番ト短調 作品5の1
第1巻 無伴奏フルートのためのエコー 作品2
第2巻 組曲(ソナタ)第4番ロ短調 作品5の4
前田りり子(バロック・フルート)
市瀬礼子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ロベール・コーネン(チェンバロ)
演奏者それぞれが作曲当時の楽器もしくは復元した楽器を用いての演奏。ベルサイユ宮で演奏(されたかもしれない)音の再現という形になっているのも注目であります。
聴いてみた印象としては、素朴で自然な響きで非常にリラックスして聴ける演奏と言えましょうか。
前田りり子によるバロック・フルートの親しみやすい響きと、その響きをさりげなくしっかりと支えるコーネンと市瀬礼子の三者によるハーモニーは絶妙。
個人的にイチ押しは「無伴奏フルートのためのエコー」、これを聴けばバロック・フルートの魅力を堪能出来ます。
各組曲もそれぞれよいのですが、その中でも構成がしっかりと作られている「組曲(ソナタ)第4番」がよいです。特に最後の3曲などはバランスもよくお気に入りであります。
ちょっと距離が近い感じがする録音はこの規模の演奏には好ましいもので良好だと思います。
とかく忙しい現代において、一服の清涼剤ともいえる今回の温かみのある演奏を聴きまして、しばし休息といった気分であります。