バルトーク 弦楽四重奏曲第5番、第6番 アルカント四重奏団
バルトークの弦楽四重奏曲と言えば、ベートーヴェンの以降では最も偉大な弦楽四重奏曲の一つであります。そんな熟練の技が必要なバルトークをデビュー盤(しかも第5番・第6番)に選んだ挑戦的なカルテットが登場しました。
その名は「アルカントQ」。メンバーはヴァイトハース、ゼペックのヴァイオリンにタベア・ツィンマーマンのヴィオラ、それにケラスのチェロ。それぞれソロプレイヤーとしても活躍しており豪華なカルテット。(2006年録音)
どうせ豪華なメンバーがざっくりと合わせて、華やかながら大雑把な仕上がりの演奏だろうと聴き始めると
裏切られました。
しかもよい意味で...
とにかく各奏者の集中力が素晴らしく、鋭さが光る密度が濃い演奏となっており、それでいて深さもあると言った演奏。
これまでのバルトークの弦楽四重奏曲で名演と呼ばれる演奏は、奏者が巧みにコントロールしながらバランスよく演奏するものか、メカニカルで技巧の切れ鮮やかに曲を解析してゆく演奏のどちらか。
今回アルカントQの演奏は鮮やかな技巧で切れ味のよいアプローチ、一見メカニカルな響きとなりそうなスタンスですが、これがどうして音に奥行きがあって深みのある響きとなっています。
これは各奏者が各々高い理想に向かって熱い思いを演奏にぶつけているからのように思えてなりません(とにかく凄味が違う)。それにはそれぞれの立ち位置がしっかりしていて、相手の音をしっかりと踏まえたという前提があり、各奏者の音楽家としての高い能力があったからこそ出来たと言えましょうか。
第一楽章の出だしから動のアグレッシブさを感じる事が出来る「第5番」は素晴らしい。中でもケラスのチェロが印象に残ります。
しかし静の中にもアグレッシブな部分を求められるため聴きやすい演奏になりにくい「第6番」をこれだけ情的に聴かせるのは他にはあまりみられません。特に静寂の中に終わる最終楽章が心に染み入ります。この曲に関してはヴィオラのタベア・ツィンマーマンがいいですね。
アルカントQにこれだけ素晴らしい演奏されますと、「デビュー盤でバルトーク?」という危惧は杞憂に終わったようであります。今回のバルトークですが、同曲の演奏でもかなり上位にランクする秀演ではないでしょうか。大変満足でありました。
バルトーク・ファンから言わせてもらえば、今後はぜひ「弦楽四重奏曲全集」を録ってほしいと願うばかりであります。