
シューベルト ミサ曲第6番 ジュリーニ&バイエルン放送交響楽団
今回の百人百曲、シューベルト晩年の作品である「ミサ曲第6番」。シューベルトが若くして亡くなった年に作曲されたこのミサ曲、作風は古典的なスタイルをとっております。今回聴いたのは今は亡きジュリーニによる演奏。
<収録曲>
シューベルト ミサ曲第6番 D.950
指揮 ジュリーニ
演奏 バイエルン放送交響楽団
1995年録音
早速聴いてみると、シューベルトらしい穏やかで緩やかな美しい旋律、晩年の作品であるためか音の深み、陰りが加わっていて独特の響きとなっており、ただ感動の連続でありました。
「キリエ」の緩やかな美しさは極上。「グローリア」は出だしの胸のつかえがとれるような合唱からしてシューベルトならではの世界。「クレド」は美しくも劇性が加わり曲構成が絶妙。「サンクトゥス」は非常にドラマティック、その転調による鮮やかな展開は見事。この辺りから美しさの中にも翳りが感じられます。「ベネディクトス」はお得意の歌曲を拡張したかのような四重唱が中心となっています。個人的に悲しい美しさを感じる曲。最後の「アニュス・デイ」は非常にずっしりと重い旋律が全体に流れる荘厳な曲。出だしの悲劇的な旋律や祈りにも似たクライマックスを耳にすると、そう遠くない死への予感がシューベルトにあったのではないかと思ってしまいます。
ジュリーニの指揮も見事の一言。寄せては返す波のような懐の深い慈悲深い響きはシューベルトに相性抜群です。今では余り聴く事が出来なくなった丸みを帯びた優しい音作りは聴く者をやさしく包み込んでくれますね。さらにバイエルン放送交響楽団の重厚なサウンドも彩りを添えております。
個人的に今までで聴いたシューベルト作品の中では間違いなく最上位に位置する傑作であると思います。今回このような至福の音楽に出会えて大変幸せでありました。
