カラヤンとフルトヴェングラー/中川右介
現在ベルリン・フィルのトップに君臨するのはサイモン・ラトルですが、本書はそれから50年ほどさかのぼった第二次世界大戦前後のベルリン・フィルのトップにまつわる争いのお話です。
主役は「神様」フルトヴェングラーと「帝王」カラヤン、それに「唯一神」チェリビダッケが加わった3人の大物指揮者です。時代はナチス時代からカラヤンがベルリン・フィルのトップになるまでとなっており、波乱万丈の人間模様が繰り広げられております。
猜疑心のかたまりのフルトヴェングラー、権力の掌握に奔走するカラヤン、苛烈なまでの要求でオーケストラに避けられるチェリビダッケ。キャラクターがはっきりしている分、生き方や行動もかなり極端となっております。特に神聖化されがちなフルトヴェングラーに関しての記述はファンの人にはショッキングなものかもしれません。
同じようなテーマを扱った書籍ではカラヤン=「悪」と捉えた視点で書かれる事が多いだけに比較的客観的に書かれており、自分などが持っている従来の(片寄った)イメージを取り払えたような気がします。
個人的には話のスタート時点でトップにいたフルトヴェングラーの優柔不断な性格が悪い方向に作用して、話が広がっていったような気がします。ただし結果的に緊張感のある状態だった事が「バイロイトの第9」などを生んでいるわけで何とも皮肉な話です。
読んだあと思った事は「単に音楽を愛して演奏する」だけではこの世界は生き抜いていけないという事です。彼らもそれぞれ一人の人間であるわけですし、演奏された音が別にその人の性格を表しているわけではない事は当たり前といえば当たり前です。
全体を通してみると内容的には目新しい発見は少なかったですが、時系列に話は進んでいくために、断片的にしか知らなかった事実の前後関係がよく分かるようになっており読みやすくなっております。これはクラシック雑誌の編集者でもある著者が長年調べた事を上手に整理してくれた賜物といえます。
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ラベル:カラヤンとフルトヴェングラー 中川右介
この本、ワタシも大変面白く読ませていただきました。
著者の中川さん、今度は同じスタイルで『松田聖子と中森明菜』という本を出してますよ(爆)。
コメントありがとうございます。
『松田聖子と中森明菜』とは微妙に懐かしいですな。現在の芸能界には疎いのでよく分からないですが、この当時ならなんとか...(汗)。今度見かけたら嫁をプッシュして買わせよう(笑)
またそちらにもお邪魔させていただきます。
それに、あとがきを見ても、労苦を共にした編集スタッフをはじめ、お世話になった人々への感謝の言葉もないとは、「出して当然」という傲慢な態度です。出版社、雑誌を立ち上げた人とはいえ、いかがなものかと思います。
人の上に立つ以上、謙虚な姿勢が大切です。謙虚さがなくば、いずれ、相手にされなくなるでしょう。