チャイコフスキー 『ある偉大な芸術家の思い出のために』、他 アルゲリッチ、クレーメル、マイスキー
アルゲリッチ、クレーメル、マイスキーという世界的な3人の名手によって演奏されたチャイコフスキーのピアノ三重奏曲。この演奏1998年で東京で行われたライブ演奏がCD化されたもの。
自分はこの演奏には苦い思い出があります。丁度演奏が行われた頃仕事で墨田区におりまして、ホテルがコンサートが行われたホールのすぐ近く。しかし仕事が忙しく行く事が出来ずコンサートが終わって満足そうに帰ってくる人並を遠くから寂しく見ていた覚えがあります。
演奏されている曲は『ある偉大な芸術家の思い出のために』という副題がついていますが、これは当時ロシアで活躍していた音楽界の重鎮ニコライ・ルビンシテインが亡くなったため、日頃親しく(喧嘩したり)していたチャイコフスキーがその思い出を音楽にした事からつけられたものです。
曲は出だしからもの悲しい旋律で始まります。この胸が締め付けられるような切ない旋律などはチャイコフスキーの真骨頂といえます。今回の演奏はメンバーがメンバーですから一人一人の主張がはっきりと示されておりスケールの大きな演奏となっています。その中でもアルゲリッチが主導権を握っており豪快なタッチでぐいぐい引っ張っているのはいうまでもありません。
火花が散るような演奏となっているのですが、意外とお互い余裕をもって演奏しているような雰囲気もありアンサンブルとして何気にまとまっています。特にクレーメルの全体を整えるバランス感覚は絶妙と感じました。少しチャイコフスキー特有のメランコリックな部分は後退していますが、パワー、スケール感、聴き応えどれをとっても素晴しく巨匠の芸術を堪能出来ます。これは第2楽章で顕著に表れており、特に変奏が進んでコーダに向かっていくあたりは圧巻の一言です。
これを聴くと仕事をサボってでもナマ演奏を聴きに行くべきだったなあと後悔してしまいますね。
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