シューベルト 弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」・第14番『死と乙女』 アルバン・ベルク四重奏団
シューベルトの生前に唯一出版された弦楽四重奏曲であるのが弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」。このサブタイトルは第二楽章の旋律が劇音楽「ロザムンデ」内の間奏曲の主題からとられていることに由来します。この主題はシューベルトもお気に入りだったのかピアノ曲の「即興曲 Op.142」の3曲目にも使われておりこちらで聴いた事がある人も多いのではないでしょうか。
今回聴いたのはアルバン・ベルク四重奏団です。(というか手元にはこの演奏しかないですが)1984年に録音されたものです。
第一楽章の出だしから暗く不安げな旋律で曲が始まります。しかしそこは歌の人であるシューベルト、すぐに優しげな旋律が受けてくれます。この不安と優しさが揺れ動いていくのがこの楽章の特長、展開部での曲の盛り上がり方も自然でアルバン・ベルクQのシャープな強奏が曲を引き締めております。
第二楽章は「ロザムンデ」の旋律が出てくる温かみのある楽章でほっと一息。第三楽章はメヌエットなのですが一般的な明るいイメージではなく暗雲が立ち込める空を見るように暗く不安げな楽章です。途中一瞬光もさすのですが最終的には不安な要素を残したまま楽章を終えます。この両楽章はアルバン・ベルクQが明るさ暗さを巧く弾き分けており各楽章の印象が明確になっている感じがします。
第四楽章は舞曲風の旋律にのって曲が始まります。曲調は不安げに暗い印象も残すのですが、前楽章のような否定的なものではなく肯定的な雰囲気があります。このもの寂しげながら聴いていて非常に魅力的な楽章で終楽章にふさわしいものであると思います。ここでのアルバン・ベルクQは揺れ動くリズムを軽くならないように軽快に弾いており絶妙な音色となっております。
この「ロザムンデ」はシューベルト特有の不安定でモヤモヤ感が漂う曲ですが、旋律に歌があり一つの詩の世界を追体験しているような錯覚を覚えるような曲であります。弦楽四重奏曲としては旋律も親しみやすいですし誰でも楽しめると思います。アルバン・ベルクQの演奏もいつもながら素晴しい、甘くなりがちな曲をうまく引き締めながら伸びやかに演奏しており、ちょっと肩の力を抜いて弾いているような気がします(実際はそんな事はないでしょうが)。
シューベルトは内向きの曲(室内楽曲、歌曲)に適性があるのかなと思わせる曲でした。
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