エレーヌ・グリモー/ザ・ピアノ・コレクション(5CD)
ブラームスのピアノ・ソナタは3曲ありその最後(とは言っても若書きですが)に作曲された「ブラームス ピアノ・ソナタ第3番」が今回聴いた曲。曲は5楽章から構成されている長大なものでありまして古典的な様式の中にロマン派の香りが漂う一品。若くに作曲した作品のためか中域に独特の味わいがあるブラームストーンはあまり見られず、変わりにといってはなんですが若き情熱を感じる作品であります。演奏はエレーヌ・グリモー。(1991年録音)
聴いてみた感じとしては「作曲者の意図と演奏者の感性がうまくマッチした演奏」といった印象。この曲あまり好んで聴かなかったのですがこの演奏を聴いて好感をもちました。
まず「第1楽章」の出だしから激しいパッションでたたみかけておりまして圧倒されます。そのフレーズや間の取り方がグリモーらしくお手本通りではなく即興性が高くダイレクトに聴き手に伝わってきます。ベートーヴェンの影が感じられる詩情豊かな「第2楽章」は月光に照らされている湖を見ているような響き。「第3楽章」のスケルツォは飛び跳ねており(シューマンの曲のように)自由に奏でられ非常に豊かなインスピレーション、鋭い感性が感じられ水を得た魚のよう。第2楽章とも関連を持ちながらより内省的な「第4楽章」は一歩ずつ歩を進めながら堂々と演奏(フレーズがなかなか決まっていていいです。)。「第5楽章」はクライマックへ向かうのに直線的で勢いがあり若さが前面に出ており溌剌と弾いており爽快。
全体を通すと尊敬している作曲家の面々の風が感じられ、古典派的要素よりも(シューマンの影響もあってか)ロマン派的要素が強い演奏であるように感じます。これはグリモーの自由奔放ともいえるスタイルからみると当然でしょうか。それに作曲者と演奏者の共鳴している部分が多く感じられまして、これはブラームスの作曲した年齢とグリモーが演奏した年齢が近い事も関係しているのかもしれません。グリモーのピアノによって曲調が(人によっては望まないかもしれませんが)ブラームスの内向的で渋みがある部分が熱いパッションを感じる曲へと変貌しております。個人的にブラームスの新しい横顔を見た印象が残りなかなか充実した演奏でありました。

