メトネル ピアノ作品集第2集 メジューエワ
独自の美学を貫きながらなかなか説得力のあるピアノを奏でるメジューエワがライフワークとしている(と思われる)メトネル ピアノ作品集第2弾が今回聴いた演奏。(1999年録音)
<収録曲>
《8つの心象風景》作品1より(4曲)
ピアノ・ソナタ 作品11の1
《おとぎ話》より(3曲)
《忘れられた調べ》作品39
なかなか渋いラインナップですな。おとぎ話もいつもながら幻想的で秀演ですが、今回は《忘れられた調べ》作品39に注目してみます。
この《忘れられた調べ》作品39 ですが下記5曲から構成されており
1.瞑想
2.ロマンス
3.プリマヴェーラ(春)
4.カンツォーナ・マティナータ(朝の歌)
5.悲劇的ソナタ
「1.瞑想」のフレーズが「2.ロマンス」に、また「4.朝の歌」のフレーズが「5.悲劇的ソナタ」に使われており関連性をもった小品集となっております。ただ先にあげた関連性をもったフレーズも曲の主題等とは用いられていない点、また曲の構成規模からいって「悲劇的ソナタ」を単独ソナタとして独立して捉える事も可能。ただ作曲者であるメトネルは「朝の歌」を「人生の朝」、「悲劇的ソナタ」を「人生の現実」と考えていたらしくセットで演奏する方が望ましいでしょうか。
さてメジューエワの演奏でありますが、いつもながら思い入れたっぷりにメトネルの世界を語りかけており素晴しい。叩きつけるパワー型のピアニストとは一線を画したピアノで、しなやかな旋律に見通しのよい流れがよく、さらにバランス感覚に優れた音のバランス構成も見事でありまして、一見地味にも聴こえる響きですが実は繊細ながら美しくなかなかしっかりとしたピアノ。
「瞑想」「ロマンス」はメトネルらしく美しさがあっても素直に曲に反映されておらず少々退廃的な雰囲気が漂う曲調であり、技法的にもかなりマニアックな要素もあるためとっつきにくさがあります。メジューエワはこの曲を丁寧に分かりやすく肯定的にとらえて演奏しております。ただメトネル特有の雰囲気や世界観は充分感じられる点は流石。
「春」は前半と後半をつなぐという意味をもっていると思われる美しい曲。メジューエワは優しく美しくそよ風のように奏でており好演。この演奏を聴いていると昔フィレンツェで観た「ボッティチェリ 春」を思い出しました。
「朝の歌」は発表会用のショートピースにも似合うような親しみやすい旋律と温かみのある曲調が印象的な曲。この曲のメジューエワのまろやかな語り口による演奏は曲調と自身の個性の波長がピッタリとはまっておりまして、彼女自身の数多いメトネルの演奏でも屈指の出来栄えであると思います。
「悲劇的ソナタ」は前曲とは打って変わって強烈な和音の連打(第一主題?)で始まる曲。途中やや陰のある優しい第2主題が現れたり、「朝の歌」の旋律が登場したりとしていますが、全体的最初の主題に見られるような悲劇的な印象が強い。自分はなにか苦しさや背負っているものが感じられ、これがメトネルが言う「人生の現実」ならなんとも厳しい現実であります。(この曲をバリバリのロシア系ピアニストで聴いたら気が滅入る事間違いなしですが)メジューエワはいつもながら音の振幅だけで悲劇性を強調しようとせず、全体の流れをうまくつかんだ演奏でソナタとしての構成を巧く引き出しております。それでもメトネル苦渋の世界は描かれておりなかなか巧い。
全曲通じて聴いてみるとなかなか聴き応えのある曲集で、個人的にもっと知名度があがってもよい曲集だと思いました。まあそれはメジューエワによるメトネルという素晴しい演奏あってこそという部分もあるのも事実ですが。
メジューエワのメトネル実演聴いてみたいですね。(アンコールで「朝の歌」なんて弾かれたらたまらないでしょうな。)

