J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集 全曲 バレンボイム(p)(5CD)
「百人百曲」を聴いていくにあたって、100曲全部は紹介しないでおこうと個人的に決めておりました。例えば第9、フィガロなどの既にこのブログで取り上げている曲をその対象としようと。今回紹介するバッハの平均律も上記の対象にあてはまるのですが、聴いているとちょっと記事に書きたくなったので紹介します。
今回聴いたのが指揮者としても活躍中のバレンボイムがソロ・ピアノで弾いた「J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集(全曲)」演奏。
自分にとってこの曲集は(以前記事に書いたこともあるのですが)数多いバッハの鍵盤曲の中で、あまり好んで聴かない曲の一つであります。まあ自分にとって聴くべき曲というよりは弾くべき曲だという思いが強いせいもあるのですが、自分の技量からするとなんとも敷居が高い。といってただでさえ理屈っぽいこの曲を学究肌の理詰めの演奏で聴きたいという気持ちもおきないというのが理由の一つでもあるのですが。
さらに今回演奏しているバレンボイム。「モーツァルト」でがっかりし、「ゴルドベルグ」では聴きながら悠々とした長大さに熟睡など過去にバレンボイムのピアノで技量に感心した事はあってもトータルの演奏としてよいという印象は正直皆無。あまり率先して好んで聴かない曲と名前を聴くと逃げ腰になるピアニストの演奏とあって正直度ゼロで聴き始めたのですが...。
聴いてみるとなかなか好印象。
淡々と弾いているのですが、バレンボイムの内面を見つめているような内省的なピアニズムが赤裸々に聴き手に伝わってきます。バレンボイムのピアノはペタルや鍵盤のタッチによる絶妙のニュアンスによる現代ピアノの機能を活かした美しい演奏で、よく言われるバッハ的なものでもなく、バロックや古楽器を意識したものでもありません。言って見れば異端ともとれる演奏で「平均律はかくあるべき」などと思っている人には不満な演奏なのかもしれません。
ただ自分にとって弾くのではなく聴く平均律としてとらえるならこのバレンボイムのピアノは丁度良い感じ。それは現代ピアノを有効に使いながら変にピアニストしていないといいましょうか、バレンボイムの視点があきらかに指揮者目線といいましょうか、多少曲全体を俯瞰したような雰囲気があるのも丁度よく感じる理由でしょうか。
心地よく聴こえるこの演奏を聴いていてさえ、装飾は違えどもバッハ音楽の根幹にある核のようなエッセンスは充分に感じられまして改めてバッハの偉大さを知った次第であります。
しかし何故かしらバッハの音楽には「月夜」が似合う。この事も日本人がバッハを好む理由の一つなのでしょうか。

