J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲全曲 寺神戸亮(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ)
日本人ヴァイオリニストである寺神戸亮が演奏した「J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲全曲」が今回聴いた演奏。(2008年録音)
ヴァイオリニストが無伴奏チェロ組曲を弾いているのと疑問に思うかもしれませんが、他作曲家の編曲でもなく本当に無伴奏チェロ組曲を弾いております。
ならばなぜ弾けたのか?
それは「ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ」という「肩かけチェロ」と呼べる楽器を使っているからであります。
写真を見る限り「大型ヴァイオリン」のような形状のこの楽器。寺神戸亮自身も含めたメンバーで時代考証の元に再現した楽器。
どんな音が鳴るのだろう?
興味津々に早速聴いてみますと、
意外や意外(と言っては失礼か)しっかりとチェロの響きをしております。と同時に現代のチェロと違う響きである事もチェロに素人である自分などでもはっきりと聴き取れます。その響きは非常に新鮮な響き。録音は「ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ」の響きを聴くにはもってこいの高音質。
その響きでは運動性が高く曲調のスムーズな流れと低音ではなく中音域に伸びが感じられる点が特に印象的。従来のチェロとの違いを感じるなら通常の四弦ではなく五弦で弾かれた「第6番」がその違いが顕著であります。
しかし全曲を通して聴くと自然風ながらなんとなく違和感が感じられる時がある演奏であります。どうしてかと考えてみますと自分が思うに従来の「無伴奏」が内向きに向かう演奏であるのに対して、寺神戸亮による演奏は多くの聴き手に「この素晴らしい音を聞いてよ」と訴えかけるようなものであるからではないかと。
ただ添付の充実した寺神戸亮自身の解説を読みますと、新しい試みにチャレンジしての一つの結果としてのこの演奏であり、訴えたい気持ちはよく分かるような気がします。今回の演奏、そんな熱い思いが伝わってくる充実した演奏であると事は事実でありまして上記の違和感などは大きな問題ではないのではないのかもしれません。
昔ビルスマのバロック・チェロの響きを聴いて驚きましたが、今回の寺神戸亮の演奏も驚きでありました。寺神戸亮の試みに拍手を送りたいです。
とにかくチェロの新しい方向性を示したこの演奏を「まずは聴いてみるべし」と言えましょう。

