ベートーヴェンの精神分析 福島章
医者である福島章氏が、専門分野である「精神医学」という切り口でベートーヴェン像を検討したのが今回紹介する図書。
第1章 アダルト・チルドレン
第2章 「運命」の四つの和音
第3章 愛することと働くこと
第4章 生まれ出ずる者たちよ!〜1812年夏
第5章 遥かな恋人によせて
第6章 第九交響曲
付章 性格学の視点から
ベートーヴェンの生い立ちで、筆者がターニングポイントであると判断したポイントを各章立てにした内容。例えば第1章ならベートーヴェンの幼年期とアダルト・チルドレンの関係、第2章なら傑作の森と「運命」の四つの和音との関係といった具合。
先日読んだ「ベートーヴェンの生涯 青木やよひ」が活き活きとした人間ベートーヴェンを語った情に訴えかける本であるならば、今回はCTスキャンをかけたような分析を積み重ねた上で、ベートーヴェンのカルテを著者なりの結論として紹介している知を刺激する本と言えましょうか。
著者の主張がはっきりとしている分、読んでいて「はいはい分かりました」と言いたくなる鼻につくため部分があったのも確かです。しかし人の上げ足をとって「これは正しくない」という書き方をする著者が多い中、福島章は自己主張とその理由を明確に提示する書き方をしているため、読んでいて(主張を信じるかどうかは別として)意外とイヤにならないのが印象的。
そういう書き方だからこそ「ベートーヴェンはアダルト・チルドレン」、「ベートーヴェンに子供がいた」など衝撃的だが人によっては与太話にしかならないようなテーマでも興味深く読ませる力があるのでしょう。
福島章の記したベートーヴェン像は切り口が鋭いため、「楽聖ベートーヴェン」と崇拝している人からすると受け入れ難いところがあるかもしれません。ただ個人的には「ベートーヴェン」という人物を精神医学という分野からどのように見えるかという、日頃知る事が出来ない視点からのアプローチは斬新で興味深い内容だったと思います。
まあ評伝形式ではないので、「ベートーヴェン」に関する本を読んで自分なりのベートーヴェン像のイメージが出来上がった時点で、副読本として読むのがよいのではないでしょうか。

